本要約【ファンたちの市民社会あなたの「欲望」を深める10章】渡部宏樹 #1700

#ファンたちの市民社会
近代以降、絶対的な宗教が不安定になった
偶像を意味する英語idolが代わり、資本主義の下で推し活が流行っている
推し対象には真実と虚構を曖昧にできる嘘がいる
ファンは働いた資本で文化的ミームを広げ、参加型の文化ほど生きる意味を与えてくれるhttps://t.co/Dj1hOSVnra
— 未熟なリバタリアンがAIソクラテスと思考実験してみた (@bluesbookblog) September 6, 2025

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Q1: 偶像と宗教の違いは何？なぜ推し活が広がった？

偶像は超越的真理を示す宗教とは違い、参加型文化の媒介として人々に意味を与える存在に変化した。近代以降、宗教が絶対的な拠り所でなくなると、資本主義のもとでアイドルやアニメなどの推し活が広がり、ファンは虚構と現実を行き来する体験を通して生きる意味を見出すようになった。例えばAKB48のような「会いに行けるアイドル」は、信仰では得られない共同体的な参加感を提供しており、これが現代の精神的支えの一つとなっている。

Q2: なぜ物語を共に作る文化が現代で魅力的なのか？

共に作る物語が魅力的なのは、受け身の信仰よりも能動的な参加が生の実感を強めるからだ。宗教は信じるしかないが、アイドル文化や二次創作は自分の手でストーリーを重ねられる余地がある。例えば同じ推しを応援するファン同士がライブやSNSで物語を紡ぐことで、自分も世界の一部を形作っていると感じられる。この参加感が、現代社会で希薄化しがちなつながりの代替になっている。

Q3: 推し活が外発的動機ではなく内発的動機で続く理由は？

推し活が内発的動機で続くのは、報酬を得るためでなく「自分の意思で参加している」という自己決定感が強いからだ。企業での労働は賃金という外発的報酬だが、オンラインサロンやファンクラブは自らお金を払って関わるため「やりたいからやっている」と認識できる。例えば月額課金制のサロンに参加する人々は、義務ではなく自己実現の手段として関与しており、この点が継続性の鍵になっている。

Q4: 市場設計やアルゴリズムは自由をどう制御している？

市場設計やアルゴリズムは自由を装いながら選択を制御している。YouTubeやTikTokのレコメンドは興味を強化し、スマホゲームのガチャはドーパミンを刺激して依存を生み出す。つまり一見自由に選んでいるようでも、実際には設計された没入感に誘導されている。ソシャゲで課金を重ねるプレイヤーは「自分の意思」と思いながらも、裏では心理学的仕組みによって継続的な消費を促されているのが典型例だ。

Q5: 推し活は共同物語か市場制御か、どちらが強い？

現状では市場制御の側面が強く、人々は構造的に依存を深めている。とはいえ人間は心の拠り所を必要とし、それが宗教からアイドルやスポーツへ移行している。例えばかつて中世では宗教が意味を与えていたが、現代では「推し」がその代替となりつつある。市場に操られるリスクを抱えながらも、文化的参加が生きる糧となっている点が特徴的だ。

Q6: 子どもより推し活が拠り所になりやすいのはなぜ？

子どもは制御不能な存在であるのに対し、推し活は投資に応えてくれる拠り所だからだ。親は子どもの人権を尊重せざるを得ず、どれだけ時間や資金を注いでも子どもは自由に人生を歩む。一方でアイドルやチームは「応援した分だけ近づける」という即時的な実感を返す。例えばAKB48の握手券付きCD購入は、投資と体験が直結しており、リスクを抑えた拠り所として広がった。

Q7: 小さな共同体化は社会を安定させるか不安定にするか？

小さな共同体化はむしろ社会を不安定にする傾向が強い。価値観が宙吊りになる不安に耐えられず、人々は信じたい物語に閉じこもり、分断が加速するからだ。二次創作や歴史解釈を自己肯定の道具にする動きもその一例で、異なる物語を信じる共同体同士が衝突しやすい。SNSでのコミュニティ分断はその典型で、安定どころか分断を固定化している。

Q8: 民主主義は多様化とポピュリズムでどう変わる？

民主主義は価値観の多様化と有限資源の奪い合いによってポピュリズム化しつつある。人間の時間や注意力は限られており、それを食い合う構造が対話を難しくしている。例えば地球環境問題では「共有地の悲劇」が進行し、協調よりも利害対立が目立つ。この状況で民主主義は合理的対話よりも短期的利益を優先する声に流されやすくなっている。

Q9: AIは民主主義の分断を調停できるのか？

AIは感情に左右されない合理的判断を提示できるため、分断調停の可能性を持つ。ただし判断基準は誰が設計するかが鍵で、透明性や正当性が求められる。企業ではすでに取締役会でAIを意思決定補助に活用する例があり、同様に政治でもマイノリティの声を可視化し調整役を担えるかもしれない。重要なのは、技術的中立性を装うのではなく、設計思想を公開して民主的に監視する仕組みである。

Q10: AIが宗教的推しになり世界を統合する条件は？

AIが宗教的推しとして世界を統合するには、娯楽を超えて人々に倫理や行動変容を促す力を持つことが必要だ。単なるバーチャルYouTuberでは消費文化にとどまるが、AIがイエスやブッダのように普遍的物語を紡ぎ直し、環境問題や共生の倫理を体現すれば新しい信仰の核になり得る。例えばアニメやゲームを媒介に「宇宙船地球号」という共通物語を浸透させれば、国境や宗教を超えた集合的拠り所となる可能性がある。