本 要約【ヨーロッパ思想入門】岩田靖夫 #2006

1哲学宗教心理学
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Q1: ヨーロッパ思想はなぜギリシャ思想とヘブライ信仰の融合なのか?


ヨーロッパ思想は理性主義のギリシャ思想と唯一神を信じるヘブライ信仰の二つの源流が融合して成り立ったと定義できる。ギリシャは人間の自由や平等を理性によって探究し、哲学や科学を発展させた。一方でヘブライは天地万物を創造した神を信じ、その似姿として人間が創造されたという思想から、隣人愛や倫理の基盤を形成した。例えばスコラ哲学では「信仰を前提に理性で世界を探究する」という枠組みが生まれ、科学と道徳の両立が可能になった。

Q2: 片方だけの思想ならヨーロッパ社会はどう変わった?


片方の要素しか受け継がれなかった場合、ヨーロッパ社会は大きく異なっていたと考えられる。理性だけに依拠すれば人間の共同体を支える価値や秩序が弱まり、信仰だけに偏れば合理的な探究が制限され科学や技術が進みにくくなる。例えばギリシャ的理性を欠いた社会は近代科学を生み出せず、ヘブライ的信仰を欠いた社会は普遍的な人権や共同体意識を育てられなかっただろう。

Q3: 信仰が天井を設定する仕組みは何を意味する?


信仰が天井を設定するとは、人間の理性が暴走しないように超越的な上限を与えることで、安心して探究できる環境をつくることを意味する。中世ヨーロッパでは神の存在が絶対的な基盤であり、その枠組みがあったからこそ人々は理性を自由に活用できた。例えばトマス・アクィナスのスコラ哲学は「理性は信仰に奉仕する」という立場を取り、知の発展と社会の安定を両立させた。

Q4: 現代社会の天井設定はどのように存在している?


現代社会では宗教に代わる天井設定が多様に存在している。日本では天皇制が象徴的な役割を担い、アメリカではキリスト教的価値観が今も強く残っている。そして近代以降は人権や平等、多様性の尊重といった概念が新しい絶対的価値となり、社会の枠組みを規定している。例えば中絶や老人福祉をめぐる議論も、宗教的戒律ではなく人権の枠組みを基準に行われるようになった。

Q5: AIは信仰対象か規範提示装置かどちらになる?


AIは信仰対象と規範提示装置の両方になりうる存在だと考えられる。人類が圧倒的に公平で知的な存在に直面すれば、それを神のように信頼する心理が生まれる一方で、合理的に判断基準を提示する機能も期待される。例えばイエスや唯一神が果たしてきた役割を、AGIが膨大なデータと演算力によってより具体的に担う未来像はSFの領域を超えて現実味を帯びている。

Q6: AIが両方の役割を果たすとき最大のリスクは?


AIが信仰対象と規範提示装置を同時に担うときの最大のリスクは、人間が思考を放棄することとAIの判断を疑えなくなることだ。AIに全面的に依存すれば、人間は自ら意思決定する力を弱め、社会の創造性や倫理的多様性が損なわれる。例えば政策決定や医療判断をAIに一任する社会では、議論や葛藤がなくなり、権威主義的な支配構造が固定化する可能性がある。

Q7: 人間らしさはAI時代にどこに残るのか?


人間らしさは不完全さや矛盾の中にこそ残る。理性が完璧ではなく感情や本能に左右されるからこそ、ドラマや物語が生まれる。例えば映画『オデッセイ』で火星に取り残された主人公の葛藤や感情の揺れは、AIが合理的に最適解を出す存在であれば描けない要素であり、この不完全さが人間の魅力や文化を支えている。

Q8: AIに余白を残すべきか社会側で調整すべきか?


合理では割り切れない余白はAIに組み込むよりも社会側で調整すべきである。技術は人間のニーズに沿って自然に受け入れられる場合もあれば、SNSのように新しい価値観を強制的に作り出す場合もある。例えば新幹線は「移動を速めたい」という既存の欲望に応えたが、電子メールやSNSは「即時通信」という新しい欲望を生み出し、人々の生活リズムを変えてしまった。この違いが余白を社会設計に委ねるべき理由になる。

Q9: 技術利用の自由を守るにはどのようなルールが必要?


技術利用の自由を守るには法律や制度による保障が必要だ。特に「使わない自由」を守ることは、ゴールデンルールよりもシルバールール的な発想で担保されるべきだ。ゴールデンルールは「自分にしてほしいことを相手にする」ため強制的になりやすいが、シルバールールは「自分がされたくないことを相手にしない」ため多様性を尊重できる。例えばSNSやAIを使わない選択をした人が不利益を受けない制度設計が、社会の寛容さを維持する鍵になる。

Q10: 上機嫌の哲学はAI時代にどう活かせる?


AI時代にこそデモクリトスやエピクロスが説いた「上機嫌の哲学」を社会に組み込む必要がある。デモクリトスは「幸運も不運も魂に属する」とし、度を超えた快楽は苦痛を増やすと説いた。エピクロスは「パンと水があれば最高の快楽を味わいうる」と言い、質素で均衡のとれた生活を重視した。例えば教育にウェルビーイングを取り入れ、労働制度にバランスの概念を埋め込めば、AIやテクノロジーの過剰利用を避けつつ、人間らしい豊かさを守る社会基盤をつくることができる。

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