本 要約【いま哲学とはなにか】岩田靖夫 #2023

1哲学宗教心理学
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Q1: アリストテレスが定義した自己肯定感と友情の関係とは?


アリストテレスにとって自己肯定感は友情の根拠そのもので、自己を肯定できない人は友を持つことができないとされる。これは『ニコマコス倫理学』で「善い人は自分を友とする」と述べた思想に基づき、自分と過ごす時間を楽しめる人が他者とも真に関係を築けるという考え方だ。例えば、現代のSNSで「友達」を大量に集めても承認欲求の確認作業にとどまる場合があり、これはアリストテレスの言う徳を高め合う友情とは質的に異なる。

Q2: 現代SNSのつながりとアリストテレスの友情はどう違う?


SNS的な友達は自己肯定感の不足を補うための「壁打ち」に近く、相手を通じて自分が生きていてよいと実感する場に過ぎないのに対し、アリストテレスの友情は相手と徳を高め合う営みだ。理由として、自己理解が浅いまま他者からの承認だけを求めると、関係は傷をなめ合う飲み会のように表層的になりやすい。例えば、SNSでの「いいね」の交換は瞬間的な承認になるが、1対1で価値観を掘り下げる深い対話は自己理解を促し、真の友に近づける。

Q3: なぜ社会人になると深い友情が生まれにくいのか?


社会人にとって時間が金銭換算される仕組みが深い友情を阻害する。学生時代は義務教育や部活動といった制度的な装置によって自然に親友ができやすいが、働き始めると「この時間に働けば収入になるのに」という機会損失の意識が強まり、友人と語り合う時間を確保しにくい。例えば、同僚との関係は「仕事は仕事、私生活は私生活」と線引きされやすく、時間をお金に還元せずに共有できる人かどうかで深い関係の有無が分かれる。

Q4: 時間を「投資」でなく「共有」と考えたら友情は変わる?


時間を投資でなく共有と捉えることで友情は利害から解放される。投資の発想だと損得や機会損失で関係を計算してしまうが、共有の発想は「誰と生きたいか」という価値基準で時間を使うことになる。例えば、休日に収入を得る副業をやめて友人と過ごす選択は投資としては不合理でも、共有としては人生の充実につながり、アリストテレスの言う「共に生きる時間」が実現する。

Q5: 友情における「消費」と「浪費」の違いは何?


友情における消費は相手との関係を豊かにするための主体的な選択で、浪費は結果的に何も残らない行為とされがちだが、浪費自体も否定する必要はない。理由は、浪費にも贅沢を味わい余裕を知る価値があり、そこから自己理解や楽しみが導き出される可能性があるからだ。例えば、高価な食事に友人と出かけることは経済的には浪費でも、会話や時間の共有が自己理解を深めるなら、それは有意義な消費に変わる。

Q6: なぜ現代社会では消費と個性が結びつけられるのか?


現代社会では企業が消費者の個性を煽るマーケティングを行い、「消費で自分らしさを証明せよ」と強迫観念を植え付けるため、個性が商品に依存してしまう。結果として人々は何が本当の個性かを理解できず、流行を追い続けるラットレースに巻き込まれる。例えば、最新のファッションやガジェットを買うことで「自分らしさ」を演出しても、すぐに次のトレンドに乗り換える必要が生じ、個性ではなく消費習慣がアイデンティティ化する。

Q7: 友情の中で個性はどう育まれるのか?


友情の中で個性は共通点と相違点を通じた自己理解のプロセスとして育まれる。理由は、他者と違いを比較し共感や衝突を経験することで、自分が何を楽しめるのか、どんな価値観を大切にしているのかを選べるようになるからだ。例えば、友人と趣味を共有することで自分の嗜好が明確になり、違う意見に出会うことで自分の立場を言語化できるようになり、その積み重ねが退屈を遠ざけ、没頭できる人生を支える。

Q8: 友情の鏡が歪んでしまうのはどんな時?


友情の鏡は金銭や利益を優先した瞬間に歪む。パスカルが『パンセ』で「美貌を失った女性を去る男は彼女を愛したのではなく自分の快楽を愛した」と述べたように、条件付きの関係は相手そのものではなく自己の利益を愛しているだけだからだ。例えば、仕事上の利益がなくなった途端に関係が切れる場合、それは友情ではなく有用性の取引に過ぎず、アリストテレスが指摘した「快楽や有用さに基づく友情は続かない」典型となる。

Q9: 相手そのものを愛する態度はどう現れる?


相手そのものを愛する態度は言葉と行動の一致として表れる。理由は、口先だけの謝罪や感謝は信用を得られず、行動で裏付けることで初めて誠実さが伝わるからだ。例えば「ごめんなさい」と言った後に同じ過ちを繰り返さない努力をする、「ありがとう」と言った後に具体的なサポートで返すといった行為が、相手への無条件の関心を示す態度として友情を支える。

Q10: 友情を徳の習慣と見立てたら何が大事?


友情を徳の習慣と見るなら、小さな行為の反復が最も大事になる。アリストテレスは徳を「繰り返しによって身につく性格の習慣」と定義しており、友情もまた日常の行動に根ざすからだ。例えば、定期的に相手の話をじっくり聞く、困難な時に声をかける、何気ない感謝を行動で示すといった習慣の積み重ねが信頼を育て、短期的な承認欲求ではなく長期的な関係の基盤になる。

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