本 要約【脱国家の世界史】ジェームズ・C・スコット #1026

2歴史地理
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概要

アカ、カチン、フモン、ラフ…様々な人々が独自の社会を築くインドシナ半島の奥地、ゾミア。この深い山中の文化や生業は、国家を回避する戦略だった。世界の自由民たちが息づくグローバル・ヒストリー。国家による管理の無力さを一貫して追及してきた政治学者・人類学者による、壮大なスケールの“もうひとつの国家論”。

著者


ジェームズ・C
スコット
1936年生まれ。イェール大学政治学部・人類学部教授。農村研究プログラム主宰。全米芸術科学アカデミーのフェローであり、自宅で農業、養蜂も営む。東南アジアをフィールドに、地主や国家の権力に対する農民の日常的抵抗論を学問的に展開した。ウィリアムズ大学を卒業後、1967年にイェール大学より政治学の博士号を取得。ウィスコンシン大学マディソン校政治学部助教授を経て、1976年より現職。第21回(2010年)福岡アジア文化賞受賞

文明度は地理で決まる

文明度は地理で決まる

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Q1: 「文明度は地理で決まる」とはどういうことですか?

文明の発展には地理が大きく関係していると感じました。例えば山地などの産地は人口が分散して、政府の統制が届きにくくなるため、独自の生活様式や文化が発展しやすいです。一方、平地や大陸部は人口が集中しやすく、稲作などの管理しやすい農業によって国家権力が強まり、文明が中央集権的に発展しやすくなります。ゾミアのようにチベット・ビルマ語で「高地民」を意味する地域では、納税もなく政策に従う必要もなく、自由で多様な生活ができる。そういった意味で、「文明度は地理で決まる」というのは納得感がありました。

Q2: 文明が進んでいるかどうかの基準は何だと考えますか?

文明の優劣を一概に決めるのは難しいと思いますが、自然の法則をどれだけ普遍的に理解できているか、つまり科学的な技術や知識の蓄積が進んでいるかは一つの指標になると思います。ただ、それが人間の幸福に直結するとは限らないとも感じています。不幸をなくすようなアプローチには文明の力が必要ですが、ある程度衣食住が安定してきた段階からは、人間的なつながりや生きがいの方が重要になってくるのではないかと思います。だからこそ、文明を評価する基準は技術だけではなく、人々の暮らし方や心の豊かさも含めるべきだと思います。

Q3: 文明を支えるのに「人間的なつながり」が大切だとしたら、それはどんな形で現れると思いますか?

不幸を減らすのは科学技術で可能かもしれませんが、そこから「幸せを選ぶ自由」を得るためには、誰かとつながっている感覚、自分の時間を自由に使える感覚が大事だと思います。理想の社会は、医療やベーシックインカムによって基本的な不安が解消されたうえで、自分が好きなことを選んで暮らせる社会です。逆に、資本主義に深く取り込まれすぎると、報酬系がハックされて、仮想空間に依存してしまうような「マトリックス」のような世界に陥る危険もあると感じます。

Q4: 仮想空間に依存しない未来のために、どんな価値観や教育が必要だと思いますか?

自分でどんな世界を生きたいかを考える力が必要だと思います。今のSNSやYouTubeのタイムラインは、自分で選んでいるようで、実はアルゴリズムに選ばされている構造になっています。こうなると、プラットフォームが儲かることが優先され、個人の意思が無視されてしまう。だからこそ、自分の「欲望」や「好奇心」を誰が決めているのかを見極める目、自分で「何を選ばないか」を判断できる理性が大切になると思います。

Q5: では、その「理性で選び取る力」はどう育てればいいのでしょうか?

結局、自分で選び、自分で責任を取る姿勢が大事だと思います。誰かの意見に従って進路や人生の選択をしてしまうと、うまくいかなかったときにその人のせいにしてしまいがちです。だから受験や就職など人生の大きな選択でも、自分で考えて選ぶ練習が必要です。それが積み重なることで、YouTubeの動画ひとつ、SNSのフォローひとつも、自分の世界観を形作る選択になっていくと思います。自由意志とは、欲望そのものを変えることは難しくても、「表示しない」や「ブロックする」などの行動を選び取ることができるということです。

Q6: その力を育てるには、どんな経験や環境が効果的だと思いますか?

今の自分に合っていないと感じたら、環境そのものを変えることが大事だと思います。文明度が地理によって決まるという本の内容ともつながりますが、産地のように人が分散する地域では自由度が高まり、大陸的な平地では統制が強くなります。自分の感じ方に応じて、都会から田舎へ、またはその逆に移動することで、情報や人間関係、日々のルーチンまでも変えることができ、自分自身の内面にも変化が生まれると思います。

Q7: 実際に「場所を変えて自分が変わった」経験はありますか?

高校時代の修学旅行でオーストラリアに行ったことがあります。そこで体験したホームステイでは、自給自足に近い生活や、自分の家でホームステイ受け入れをしながらローンを返していく合理的な生活を見て、日本での常識がひっくり返る感覚を味わいました。「大きな家=不自由」ではなく、「大きな家=資源」として活用している姿に学ぶことが多かったです。それに、働かなくてもある程度豊かに暮らせている姿がとても印象的で、人生の選択肢はもっと自由でいいんだと気づかされました。

Q8: そのオーストラリアでの経験をヒントに、日本でも取り入れられそうなことはありますか?

自分の家をシェアしたり、空間を有効に活用して収入につなげたりする暮らし方は、日本でも十分応用できると思います。また、「働きすぎない」ことへの許容も大切。日本ではまだまだ「努力し続けること」が美徳とされがちですが、オーストラリアのように「無理をせず、持っている資源でのびのびと暮らす」という生き方も選択肢の一つとして広まってほしいと思います。

Q9: 結局、自分の世界観を育てていくうえで大切なことは何だと思いますか?

一番大切なのは、自分で選び取ることと、その選択に責任を持つことだと思います。誰かの世界観をそのまま取り入れるのではなく、自分で何を大事にするかを日々選び続ける。その積み重ねが、SNSのタイムラインで見る情報、付き合う人、住む場所にまで影響を与えていきます。逆に言えば、そうやって能動的に選ばなければ、気づいたら誰かに選ばれた情報や世界の中で生きてしまうことになる。だからこそ、毎日の「小さな選択」が大事なのかなと感じています。

Q10: 今後、自分自身や社会にどんな変化があると理想的だと思いますか?

自分自身は、自分の世界観をしっかりと持って、それをもとに環境や情報を選べるようになっていきたいです。そして社会全体としては、技術が不幸を減らし、自由を保障し、そこから先は個々人がつながりや感性をもとに生き方を選べる、そんな多様性のある世界が理想です。単一の成功モデルにとらわれず、それぞれが自分の価値観で「豊かさ」を感じられるような社会になってほしいと思います。

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